デザインのある光景Number: 41


Subject:

Toyo Bunko Museum

Text: Yoshiko Taniguchi

Photo: Kyoko Omori

Mother Comet No.53 | 2020.August

名勝・六義園のほど近くにある「東洋文庫ミュージアム」(文京区駒込)。ここは1924年、三菱財閥の3代目総帥・岩崎久彌(ひさや)氏が設立した東洋学の研究図書館。その分野では日本最古にして最大規模を誇り、世界5指の1つに数えられているアジア最大の東洋学センターだ。2011年に「より多くの人たちに東洋学を知ってもらいたい」とミュージアムを開設。世界に3冊しかないマルコ・ポーロの「東方見聞録」や、杉田玄白・前野良沢著「解体新書」の初版本など、貴重な蔵書を展示しながら、東洋学の面白さを発信している。

そんな知の殿堂の一角に、‟日本一美しい本棚“と称される「モリソン書庫」(写真)がある。静謐で仄暗い空間に納められた2万4千点にも及ぶ書籍や絵画類は、イギリスのジャーナリスト、ジョージ・アーネスト・モリソンが約20年かけて収集したものだ。「モリソンはロンドンタイムズの北京特派員を経て、1911年に中国の中華民国総統府顧問となった人物です。極東関係文献の収集家でもありました。彼が中国を去る際、貴重な文献の散逸を避けるために、まとめて譲渡できる相手を探していたところ、白羽の矢が立った久彌氏が1917年に一括購入。現在の価値で約70億円とも言われています」と、普及展示部の池山洋二さん。

モリソン書庫の購入を機に東洋文庫を設立した久彌氏はさらに収集を継続。国宝5点、重要文化財7点、書籍100万冊を所蔵するまでとなり、96年たった現在も研究者たちの‟生きた書庫“として大いに活用されている。「文化や社会への貢献に心をくだいていた久彌氏の想いは、時代を経て、今も大切に受け継がれています」。

こう書くと敷居が高い場所だと思われそうだが、ミュージアムは一般客が楽しく過ごせるような工夫が随所に垣間見える。貴重な文献の説明には、時にユーモアを交えて分かりやすいものにしているし、企画展は膨大な資料をもとに、他施設とは一線を画するような内容でとても興味深い(9月22日まで「大宇宙展~星と人の歴史」を開催)。疲れた時は、企画展に合わせたメニューが随時登場する「小岩井農場」直営のレストランでほっと一息。何より、貴重な書籍の保存に心血を注いだ先人たちの魂が宿る、神々しい「モリソン書庫」を眺めながら、東洋学の奥深さを肌で感じる時間もまた一興なのだ。

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