デザインのある光景Number: 35
Subject:
Play Design Hotel
Text: Yoshiko Taniguchi
Photo: Kyoko Omori
Mother Comet No.47 | 2020.February
旅に欠かせない宿。目的や予算などによって選択肢は多種多様だが、今回紹介する「玩味旅舎(ワンウェイリューシャー)」は、デザインに目がない読者におすすめしたい、デザインに特化したホテル。
場所は、生活感漂う下町の雰囲気に、先進的なショップが点在する人気のエリア・大同区。お世辞にもホテルが入っているとは思えない、古い雑居ビルの5階をリノベーションし、2015年にオープン。客室は5つで宿としては小規模だが、秀逸なコンセプトと高いホスピタリティーが評判となり、主要な旅行サイトで次々に高評価を獲得。世界的に権威のあるデザイン賞のひとつ「iFデザイン賞」を受賞するなど、国内外で話題のホテルだ。
最大の特徴は、客室の家具、装飾品、アメニティーのすべてがデザイン性・機能性に優れた「メイドイン台湾」の製品だということ。空間デザイナーを生業とするオーナーのダニエル・チャン氏が、国内で集めたブランド数は100以上。台湾の旬なデザインだけでなく、地域に根付く伝統的なアイテムもセレクトしており、コンセプトは“泊まれる、台湾デザイン博物館”である。
「地元のデザイナーが手がけた製品を、使ったり触れたりできるのはホテルならでは。より深く理解してもらえるし、気に入ればサイトから購入もできます。世界各国のゲストと台湾のデザイナーを繋ぐ目的もあるけれど、何より台湾の魅力を知ってもらいたい」とチャン氏の志は高い。
5つの部屋はそれぞれ、テーマによって異なる空間に作り上げており、写真は生物学とアートを融合させた「フューチャーラボ」という部屋。一見、広々としてクールな空間だが、菌を培養して作ったアート作品や実験器具、希望すればバイオロジー研究に参加できる簡単なキットが設置されるなど、斬新なアイデアが満載だ。その他、厳選した数種類の台湾茶を自由に試飲できる「プレイティールーム」や、事前に使いたい家具を選び、自分好みに配置もできる「ゲストセレクションルーム」など、ホテルの概念を軽々と超える、付加価値の高い客室が用意されている。
人生は選択の連続で、旅もまたしかり。この小さなホテルを選べば、まだ知らない台湾に出合えるかもしれない。