デザインのある光景Number: 26
Subject:
Not Just Library
Text: Yoshiko Taniguchi
Photo: Kyoko Omori
Mother Comet No.38 | 2019.May
近年「食べ物がおいしい」「短時間で行ける」などの理由から、高い注目を集めている台湾。スターフライヤーも2018年10月から北九州と名古屋空港発着の台北便を就航中だ。
台湾を訪れた旅人たちは活気あふれる夜一を歩き、現地でしか味わえないグルメに舌鼓。ガイド本やスマホを片手に東奔西走すれば、足と胃袋が悲鳴をあげることも・・・。そんな時、ちょっと呼吸を整える場所として、おススメしたい場所がある。
目指すは展覧会会場やアトリエなど、芸術活動の拠点として2011年にリノベーションされ、注目を集めている「松山文創園区」。広大な敷地は、かつて日本統治時代に建てられたタバコ工場の跡地で、「不只是図書館」は工場のオフィスだった建物を再活用。天井や窓枠など、主な構造を生かしたスタイリッシュな空間には、海外や台湾国内のデザイン関連の書籍が約2万冊、100種類以上の雑誌・専門誌を収蔵。台湾初の“デザイン”をテーマにしている点も、推したい魅力のひとつだ。
「デザイナーたちが勉強できる環境を作ろうと、財団法人・台湾デザインセンターが2012年に立ち上げました。日本の書籍も多く、特に写真やエディトリアルデザインの書籍が揃っています」と、スタッフの陳乃惠(アンバー・チェン)さん。大きな窓からは豊かな緑と隣接するリノベーション建築を眺めることができ、そんな景観を邪魔しないよう、照明やテーブルをオーダーメイドしたという、こだわりの空間も自慢だ。
こんなに贅沢でうらやましい図書館が登場した背景には、台湾政府が「デザイン」を国の重要施策の1つに掲げていることが大きい。実際に台北市内を歩くと、古い時代の風情を残したりリノベーション建築や個性あふれるアーティスティックな施設などを目にすることが多く、デザインに興味を持つ若者も年々増加しているそう。この図書館は、台湾のデザイン力を底上げするという、重要な役割を担う場所でもある。
とはいえ、観光客がふらりと立ち寄れる気軽さもあり「飲み物が持ち込めるので、コーヒー片手に本をめくる観光客もいますよ」と陳さん。ショップやミュージアムなどが点在する「松山文創園区」内にあるので、観光の目的地として魅力的だし、何より海外で図書館を訪れるという、特別感も心をくすぐる。入館料は1日券が80元(日本円で約289円)。名前通り「ただの図書館ではない」と自負するクールな「不只是図書館」で、いつもの旅とは違う休息を楽しんでみては。
※1元=約3.61円(2019年4月現在)