デザインのある光景Number: 21


Subject:

Hakata Old Town Light Up Walk
1000 Years of Fabulous Night

Text: Yoshiko Taniguchi

Photo: Kyoko Omori

Mother Comet No.33 | 2018.December

九州最大の都市として発展を続ける福岡市。経済、文化の中心地としての活気、豊かな食文化などが市の魅力として認知されているが「人口の割合に対し、福岡市のお寺の数は京都に次いで多い」という説があることは、あまり知られていないはずだ。

JR博多駅からほど近い、博多区の御供所・冷泉・奈良屋・大浜エリア(博多旧市街)には聖福寺、承天寺といった禅宗の古寺や博多総鎮守・櫛田神社など、62もの寺社が点在。中世最大の貿易都市として繁栄した歴史と、それに由来する伝統・文化が、今もこのエリア一帯に色濃く残っている。

そんな博多旧市街の知られざる魅力を身近に感じてもらい、広く伝えたいという想いから、由緒ある寺社を光で照らすイベントが2006年にスタート。秋の夜を彩る雅な催しは年々その規模を拡大させ、第13回目を迎えた今年は「博多旧市街ライトアップウォーク 千年煌夜(せんねんこうや)」とタイトルを変更。10月31日から11月4日までの5日間、16の寺社が幽玄な光に包まれ、延べ12万人超の観客を魅了した。

写真は、弘法大師が創建した日本最古の寺「南岳山 東長寺」での光景。今年のテーマ「博多織」を題材に、五色献上の紫の光と、「博多織の技、志、命を紡ぐ」という視点で制作されたデジタルアートを、巨大な本堂の扉に投影した光と映像のコラボ作品だ(演出/パナソニック株式会社エコソリューションズ社、映像/annolab)。斬新で心に残る演出は、寺社やその土地の歴史を学び、777周年を迎えた博多織へ敬意を払って創作した、クリエイターたちの真摯な努力の結晶でもある。

イベントの総合監修を務める、照明デザイナーの松下美紀さんは「通常は互いにライバルである20社の照明メーカーがタッグを組み、知恵を絞っていろんな挑戦を重ねる特別なイベント。今後も様々なアイデアと技術を駆使して、100年続く博多のお祭りにしていけたら」と話し、視線はすでに来年に向けられていた。静謐な町並みを彩る同イベントは、すでに博多の秋の風物詩として、定着している感もある。来秋はどんな光が寺社とその歴史を照らし出すのか、今から楽しみに待ちたい。

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