デザインのある光景Number: 11


Subject:

St.Mary's Cathedral, Tokyo

Text: Yoshiko Taniguchi

Photo: Kyoko Omori

Mother Comet No.23 | 2018.February

東京メトロ有楽町線「江戸川橋駅」を出て、目白坂を上っていくと、10分ほどで総ステンレス張りの構造物が見えてくる。天に向かって伸びる直線と大胆な曲線が放つ斬新なフォルム、光に反射して銀色に輝く圧倒的な存在感。私たちの“教会”というイメージを覆す建物は、日本を代表する建築家・丹下健三作「東京カテドラル聖マリア大聖堂」(1964年)。20世紀における教会建築の最高峰として高く評価され、日本のモダニズムを代表する建築だ。

外観に心を揺さぶられたまま教会の中に足を踏み入れると、今度はコンクリート打ち放しの壁で造られた、静謐な巨大空間に驚かされる。「現代のコンクリート技術を最大限に駆使して、一つの崇高な精神的小宇宙を作りたい」という丹下氏の想いを形にした空間は、祈りを捧げることだけに集中できるシンプルな造り。余計な装飾がないからこそ、荘厳さが一層際立ち、神への畏怖を感じさせる雰囲気に満ちている。

「特徴的なカーブを描く、8面のコンクリートの壁をほぼ垂直び立てかけた構造(HPシェル構造。HPとはハイパボリック・パラボロイダルの頭文字で、日本語では双曲放物線のこと)で、建物を空から見ると十字架を形作っています。また祭壇背後にある窓には、アラバストル大理石を薄く切りだしたものをはめ込んでいて、大理石越しに注ぐ柔らかな光が高さ16mの十字架を浮かび上がらせます。この美しい光景は季節や時間帯で変化していくんです」と、大聖堂事務所の白数(しらす)さん。「インターネットで東京カテドラル、ドローンと検索すれば、上空からの映像や、太陽が降り注ぐ最も美しい時間帯の映像を見ることができますよ」とも教えてくれた。仄暗い灰色の空間に優しい太陽光が降り注ぐ光景は、希望や安息感を感じさせる、まさに祈りを捧げる神聖な場所。誰でも参加できるミサや講座もあるので、詳細はホームページで確認を。

ちなみにクリスチャンではなかった丹下氏だが、設計にあたり何度もミサに足を運んで研究を重ね、晩年は洗礼を受けて信徒に。2005年に91歳で亡くなった際は、この場所で葬儀が営まれ、地下納骨堂に納骨されている。ここは自身の名を世に知らしめた代表作のひとつであり、彼が愛した作品のひとつでもあるのだ。

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