デザインのある光景Number: 1
Subject:
Jet Engine
Text: Yoshiko Taniguchi
Photo: Kyoko Omori
Mother Comet No.13 | 2017.April
飛行機の心臓部ともいえる、ジェットエンジン。今回は特別に、カバーを開けたジェットエンジンの内部を見せてもらえるということで、スターフライヤーのメンテナンスセンターを訪ねた。
飛行機1機がすっぽり入る大きな空間で私たちを待っていたのは、エアバスA320。この機体に搭載されているジェットエンジンは、アメリカ・フランス合弁の「CFMインターナショナル」製。最大推進力が大きいという特徴のほか、出力を調整するためのスロットレバーを動かすと、自動的に左右のエンジンバランスを調整するという、便利な機能もついている。「アクセルも決められた出力しか出せないし、全てが機械によってコントロールされています。この飛行機に限っては、ほぼオートメーションで飛んでくれるんです」。黒い機体を見上げながら、ベテラン整備士が教えてくれた。
そんな話に耳を傾けていると、若い整備士たちが2人がかりでエンジンカバーを持ち上げ始めた。両手を広げるように、左右に上昇したカバーの中から姿を見せたのは、ボディに約300万個ものパーツをまとった精密機器の集合体。大きさゆえの迫力と、とことん追求し、おのずと生まれたであろう機能美。初見なら、誰もが心を奪われる光景だ。
「エンジンにはAとB、2つのチャンネルを備えていて、例え1つが不具合を起こしても、残りの1つでカバーできるようになっています。しかもお互いに間違いがないかを確かめ合う”クロストーク”というプログラムも内蔵しています」。人知の限りを尽くして作られたエンジンの、なんと万能なことよ。
しかし、どんなに自動化が進んでも、飛行機を安全に飛ばすためには、人の手が欠かせない。運航前に法で義務づけられた定期点検を行い、機械がより円滑に動くよう、整備するのは人間だ。取材中、若い整備士の女性が、油で汚れた機体を丁寧に何度も拭いている姿を見かけた。人が機械に寄り添う光景はとても優しく、今もしっかりと目に焼き付いている。